宛城の戦い

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建安2年(西暦197年)、春。 宛に詰める曹操の軍勢は、夜闇に乗じた急襲を受けて大混乱に陥っていた。 方々から火の手が上がり、煙と怒号に包まれた城内は収拾がつかない状況となった。 「この儂(わし)が後手に回るとは……張繍め!」 忌々しげに呟くこの男こそ、曹孟徳その人であった。 しかし、今の彼に普段の余裕は一切なかった。 それもそのはず、すでに宛城の曹操軍は戦える状態になく、退却する以外に選択肢がなかったのである。 曹操を守る兵士は少数であり、城内に侵入した敵部隊によって次々に討たれていく。 (これでは城外への脱出も難しい……) もはやこれまでかと曹操が諦めかけたその時であった。 「うおおりゃあッ!」 「ぎゃあ!」 「ぐはっ!」
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