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しばらく難しい顔をして黙っていた北郷は、やがて意を決した様子で口を開いた。
「……曹昂さん。今から俺が言うことを、信じてくれますか?」
至極真面目な顔でそう言う北郷にただならないものを感じ、曹昂は頷く。
「わかった。貴殿を信じよう」
「ありがとうございます」
北郷はひとつ深呼吸をすると、己の身の上を語り始めた。
自分が未来の世界の人間であり、少し前まで乱世とは無縁の生活を送っていたこと。
典韋をはじめとする勇将たちは、後世において男性として語り継がれていること。
そして、北郷が現在世話になっている人物、曹操は少女であるということ。
北郷の口から告げられた話は、曹昂にとって衝撃的な内容の連続であった。
語り終えた北郷は、混乱している様子の曹昂を見て、思わず苦笑を浮かべた。
「さっきは信じてくれるかなんて聞いちゃったけど、曹昂さんには信じられないような話ばかりですよね」
「……ああ。たしかにそうだな」
あまりに突拍子もない話の数々を聞かされたせいか、曹昂は軽く目眩を覚えていた。
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