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風を切る戟の音が聞こえたかと思うと、張繍軍の兵、数人が吹き飛ばされた。
「殿! ご無事でしたか!」
「おお、悪来!」
現れたのは、曹操の親衛隊長を務める大男、典韋であった。
優れた武勇を持つ典韋は、曹操から「古の悪来の再来だ」と言われて気に入られている猛将である。
曹操と合流した時点で、すでに体のあちこちに傷を負っていた典韋だが、それらをものともせずに敵を薙ぎ倒していく。
次第に典韋に挑みかかる兵は数を減らし、遂には遠巻きに様子を窺うだけとなった。
「曹操様、ここで某(それがし)が敵を食い止めます! 今のうちに脱出を!」
「何!? 儂にお前を見捨てろと言うのか!」
いくら典韋が一騎当千の武人であるとはいえ、絶えず現れる敵兵の全てを、手負いの状態でありながらたった一人で撃退するのは難しい。
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