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思わず足を止めた曹操に、典韋は背を向けたまま声を張り上げた。
「ここで殿を失うことは、乱世が長引くことと同義! 殿の覇道、半ばで途絶えさせるわけにはいきませぬ!」
「……わかった。死ぬなよ、悪来!」
曹操と数人の兵が撤退する様子を見て、追撃しようと張繍軍の兵たちが動き出す。
「某の目が黒いうちは誰も通さんッ!」
典韋が戟を振り回して大喝すると、敵兵は皆一様に怖じ気づいて動けなくなった。
その後方、駆け付けた張繍軍の援軍を見て、典韋の表情がさらに険しくなる。
援軍の兵たちは矢筒を背負い、弓を手にしていた。
(囲まれて一斉射など受けては、さすがに凌ぎ切れん……!)
典韋は意を決し、戟を構え直して吠える。
「張繍軍の雑兵ども、刮目せよ! これが典韋の武! 悪来が死に様よ!!」
未だに距離を取り続ける敵部隊に対し、典韋は単身突撃を敢行した。
◇ ◇ ◇
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