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「子脩! 安民! 来てくれたか!」
現れた部隊を率いていたのは、曹操の子である曹昂(子脩は彼の字)、曹操の甥にあたる曹安民であった。
彼らは曹操とは別の場所から宛城を脱出していた。
「父上、こちらへ!」
単騎で突出して曹操と合流した曹昂は、すぐさま馬から降りると、その手綱を曹操に握らせた。
「西涼育ちの私の馬ならば、張繍軍の騎馬隊が相手でも逃げ切れるはずです! さあ、お早く!」
「お前はどうするつもりだ! 馬が無くては撤退が……」
「私のことは良いのです! 父上を失えば、我が軍に未来はありませぬ!」
曹昂が剣の腹で馬の尻を叩くと、曹操を乗せた馬は嘶(いなな)いて駆け出した。
「子脩っ!」
曹操は慌てて馬首を返そうとするが、走り出した馬は方向を変えることなく、曹昂から離れていく。
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