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曹安民が問うと、曹昂は曹操が撤退した方へと視線を向けた。
すでに曹操の姿は闇の向こうに消えている。
「今は父上が乗っておられるはずだ」
「そうか。では、どのようにしてここから撤退なさるおつもりだ?」
「元より撤退するつもりはない」
「何ですと!?」
曹昂の答えに対し、曹安民は驚きの声をあげた。
曹昂は曹操の正室に育てられ、また曹操の子らの中では最年長である。
つまりは曹家の嫡男、曹操の後継者ということになる。
「子脩殿は曹家を継ぐお方! ここで死すべきではなかろう! 貴殿が戦死したのち、誰が曹操様の後継を務めるというのだ!」
「子桓や子文がいる」
子桓は曹丕の字、子文は曹彰の字であり、いずれも曹昂の弟である。
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