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「しかし、そうはおっしゃるが……!」
なおも食い下がる曹安民の言葉を遮るように、曹昂が口を開く。
「私はともかく、父上は……曹孟徳は、ここで果てるべき器ではない。父上が確実に退却なさるためには、城に程近いこの地で敵を引きつける囮役を、誰かが担う必要がある」
「ならば俺がその役目を!」
馬上から身を乗り出す曹安民だが、曹昂は首を振った。
「安民殿は傷を負っておられる。貴殿の馬もだ。その状態では満足に時間を稼げない」
「……お気づきだったのか」
曹安民は宛城を脱出するために敵の包囲を抜ける際、敵部隊の猛攻を受けて負傷していた。
さらには馬の足を槍で叩かれたらしく、曹昂に追いつけなかったのはそのためであった。
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