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こんな家の子供がサンタクロースを信じているわけがないし、プレゼントだってもらい放題だ。
やれやれ。よりによってなんでこんな家に俺を寄越すんだ。
あのジイサン、遂にもうろくでもしたか?
まあいい。とっととプレゼントを置いてきたら、あのジイサンの首でも絞めてやるさ。
俺はソリからプレゼントの小箱を取り出すと、子供の部屋に忍び込んだ。
「待っていたわ」
部屋に忍び込むなり、そんな言葉をかけられ、俺は驚いて振り返った。
するとそこには10歳にも満たないであろう少女が、仁王立ちで立っていた。
「サンタさん。プレゼントは持ってきてくれたでしょうね?早くちょうだい」
高飛車だ。そしてくそ生意気だ。
黙っていれば、愛らしい人形のような可愛らしい少女だというのに、可愛いげの欠片も存在しない。
だから俺は皮肉を込めて言ってやった。
「俺がサンタ?本当にそう見えるのか?」
「サンタさんじゃないのならこんな夜中に、こっそり来るのだから泥棒よね。あいにく目が見えないから分からないけど」
目が見えない?嘘だろ?視線は俺をちゃんと捉えているじゃないか。
「サンタさんのくせに子供をバカにしてるでしょ。転んでケガしたらパパとママが心配するじゃない。だから目が見える子と変わらないようになるためにスッゴクがんばったんだから」
やはり可愛くない。でも俺は少女の言葉が気になった。
「心配されるのが嫌だから頑張ったのか?」
「そうよ。だってパパもママも私が大好きだから。でも、大好きすぎて私を心配してケンカになっちゃうの。
だからがんばったの。ひとりでなんでもできるように」
そこまで言うと、少女は苦痛な表情で僕を見つめた。
とても目が見えないと思えない強い光を宿した青い瞳で。
「それなのに、私の目が見えるようになることはないとお医者さんから言われてからは、更にケンカをするようになったの。
だから私、サンタさんにお願いしたの。オーロラをプレゼントしてくださいって」
オーロラ?と、言うことは、この箱の中身はオーロラ粉か!?
オーロラ粉は風のない夜に空から撒けば、オーロラが出現するサンタクロース演出用のアイテムだ。
これは易々と渡せる代物じゃない。
だが、少女は必死に俺に懇願してきた。
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