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「…帰れません。
あなた様がこちらの祠に祭られているという神様でいらっしゃいますか。」
「違う。
俺は神ではない。この森にすむ妖狐だ。
神に頼みでもあるのか?
お参りなら日の出ているうちにしろ。
こんな夜中に森に入るのはあまり感心しない。」
「妖狐…、この森に化け狐が出るというのは本当だったのね。
ごめんなさい。あなたに食われてやるわけにはいかないの。
私はこちらの神様への生贄だから。」
生贄―、生贄とは災害や飢饉を治めるために神にささげる貢物だと聞いている。
その生贄がこの少女だというのか。
着物で隠れていて気付かなかったが、
よく見るとその少女の細い手足には逃げられないよう縄がまかれていた。
それを見た妖狐の眉間にしわが寄る。
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