ハイウェイ・ランデヴー

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 桜の蕾が膨らみ始めた、3月。卒業式を終えたクラスメイト達が散り散りになって行く中、何故か安曇竜兵は人生の岐路に立たされていた。 「竜さ…、今の俺の話、聞いてた?」  体育館裏の倉庫とプール更衣室の狭間に呼び出されたこのシチュエーションは本来、ときめきと期待・不安が入り混じるはずなのだが。…残念ながら現実はそううまくはいかないようである。 「うん」  殊更に言ってのける竜兵に、目の前の男…吉冨善は切れ長の目を僅かに眇めた。 「とりあえず、竜って呼ぶのはやめろ」 「安曇」  竜兵は大仰に「うむ」と答えて一度深々と頷く。 「で、返事は?」  余裕を見せている竜兵だが、実はとんでもなく切羽詰まっている。…それもそのはず。 『付き合わない?』  笑顔一つ作れない善の顔を見て、その言葉の真意が分かってしまったのである。  『付き合って』には二重にあると思うのだが、ちょっとお出かけしませんか、のニュアンスとは明らかに違うのは表情を見れば分かる。 「…どこまで?」 「どこまで…って…いや、だから」 「だから山手線で言ったら、どこまで付き合えばいいの?」  善は明らかに困って「山手線…」と復唱する。
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