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半分はおもしろがっているのだが、そんなことを言えば揶揄われたことを怒った直後に、本心を言えと迫られるに違いない。
「なに俺…振られんの……?」
善がこれほどまでに落ち込むのには、理由がある。
竜兵と善は、同じ病院で2日違いで生まれ、それから母親たちの交流によって幼馴染みとして育ってきたのである。
今までずっと善は竜兵にずっと寄り添い、部活も高校も全て同じ所を選んできた。善は『竜には俺がいないと』という妙な使命感を抱いており、それが恋愛感情に変わる要素は十分にあったと言える。
一方、竜兵はそれを今まで黙認しつづけており、周囲には善の気持ちを知って肯定している…と捉えられていた。もちろん、善も例に漏れず『両想いだ』と思っていたのである…今までは。
…しかし。
「なぁ竜…」
「安曇」
「安曇…。俺らさ、来月から別々の大学通うんだよ?」
正直、竜兵は善より脳みその出来がいい。日本屈指の名門私立である慶安大学を第一志望としていたのだが、善は残念ながらランク外だったために今春からは明和大学へと進学することになったのである。
「………。だから?」
竜兵は目を眇めて善を一瞥する。冷めている、という点では温度差は同じかもしれないが、竜兵と善のテンションは明らかに違った。
「こう…なんというか、卒業しても竜と繋がりが欲しくて」
「繋がりも何も、オレんちお前んちの裏じゃん」
仕切りも垣根だし、と続けて言うが、善は不機嫌だ。
「そうだけど…そうじゃなくて!」
大概自分も意地が悪い…竜兵は分かっていて、善の知りたがっている回答を避けているのである。
(ちゃっかり名前で呼んだしな…)
もう少し、焦らして仕置きをしてやる必要がある。…そう思った時だった。
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