ハイウェイ・ランデヴー

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「あー、いたいた」 「やっぱここだったか」  体育倉庫の影から、三人の男がぞろぞろとこちらに向かって歩いてくるのである。  前から丘野・森・松尾。三人とも常日頃からつるんでいるいわば仲間だ。 「ちょ…っ、お前らどうしてここ……ッ」  慌てたのは善だった。それに比べ竜兵は平然としたもので、「つまらん」と小さな声で吐き捨てた。 「何しに来たの」  竜兵が尋ねると、丘野がへらへらと答える。 「ヨッシーの性格上、告白するならベッタベタなシチュって読めんじゃん」  そうか、そういうことか。今日が卒業式で、竜兵と善が二人で消えたとなれば…と推測したのだろう。残念ながら大当たりだ。 「つか竜ちゃん、マジに告られたん?」 「まぁな」  松尾の問いに素直に答えると、三人は「うっそォマジかよ!」と鬩ぎたて、各々の欲望に忠実なところを曝け出す。 「本気かよオメェら千円出せよ」  一人勝ちか、森が丘野と松尾に向けて手を差し出す姿に、竜兵は眉間を押さえ、善はあんぐりと絶句した。 「か…っ、掛けてやがったのかよお前ら!薄情者っ!」  三人の気持ちも分からなくはない、と竜兵は思う。竜兵だとて自分が当事者でなかったらこの賭けに参加たかったくらいだ。  さすがに『薄情者』という言葉は心外だったらしく、三人は同時に目を光らせてにやりと笑う。 「えーじゃあ手伝ってやるよ」 「ちゅーしろ、ちゅー!」  言いざま、丘野と森が善を、松尾が竜兵を羽交い絞めにし、互いを寄せ合うようにぐいぐいと押し始めるのだ。 「な…っ、お前らやめろ!」  慌てたのは竜兵である。167センチという標準よりやや小柄な竜兵には成す術なく善に密着させられ、往生際悪く唇を内側にしまいこんで抵抗した。 「あ、あぁっ、待っ…俺、心の準備が…あぁでも」  一方、善は抵抗するそぶりは見せるものの本気で振り払おうとしていないのがありありと分かる。竜兵とは対照的に186センチもある細マッチョのくせに、丘野と森を振りほどけないわけがないのだ。
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