ハイウェイ・ランデヴー

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「な~んてなっ」  松尾がニヤニヤしながら竜兵の羽交い絞めを解く。 「…って殺す気か!」  勢いよく振り返ってつま先立ちで松尾の胸ぐらを掴むと、その仕草に丘野と森までもが善を解放してわははと笑う。 「竜ちゃん怒らすと怖いからなっ」 「訴えられちゃう」  などと揶揄う松尾と森を見て、丘野がそのおちょくる空気を増長させる。 「竜こんなだし、諦めておれと付き合おうぜ」  善の位置の高い肩に腕を回して絡みつくと、竜兵は無言で「むぅ」と頬を膨らませる。残念ながら善はこの表情を見逃してしまったのだが、他の三人はニヤニヤが止まらない。 「いやおれが」 「おれおれ」  これは振りだな…と竜兵は咄嗟に頭が働いた。名前が同じだからと、いつもこうして某お笑い芸人に見立ててネタを振るのだ。 「………じゃあ、オレが」  松尾と森までもが善に絡みつくのを見て、竜兵は思わずノッてしまう。それと同時に三人は善から引き、「どうぞどうぞ」と竜兵を善に押し付けた。  竜兵は思わずつんのめって、善の薄いがたくましい胸板に押し付けられる。 「…えっ、えぇ…?本気…?」  善の両手は、竜兵を抱きしめたいけれどいいのかな…といった風に空中でわきわきと動いている。  竜兵は気づかれないような小さな溜息を吐いて、善にだけしか知られないようにそっと、その胸に頬を摺り寄せる。 「とりあえずさー、飯食いに行こうぜ。高校最後、色気もねぇ男だらけの大晩餐会ってかな」  すでに歩き出していた丘野が、振り返ることなくそう言った。他の二人も「いいねぇ」とか「またサイゼかよー」と笑い合って丘野に続いてく。  その場に立ち止まったままの竜兵と善は、一瞬だけ視線を交わして身体を離した。 「ばかやろ、色気はあんだろ」  善だけをその場に残して、竜兵は一歩を踏み出す。 「あっ、そうでしたぁ~」 「お色気担当の竜が来なくちゃなっ」  三人の間に割って入りこんだ竜兵の後ろ姿を、善はただ見つめている。 「イロモノの間違いじゃねぇだろうな」  竜兵のツッコミにうははと笑ってごまかす声を聞きながら、こっそり善を振り返って立ち止まった。三人は倉庫の角を曲がり、笑い声はやがて薄れていく。
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