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「出会って2日目で、しかも話したのなんて何時間?ってレベルの人間同士がお互いを理解するなんて無理っしょ(笑)」
すごく当たり前の事を言ってると思う俺。
何も言わなくても自分を理解してくれる人なんていない。
何かを言った所で、理解してくれる保証もない。
「それに、親の敷いたレールの上を走るのが嫌なら自立すればいい」
「そんな、簡単に…!」
「ああ。簡単じゃない。でも俺は、そうした」
「え…?」
両親が離婚した後。
母親は何人かの男を経て再婚をした。
新しい父親となった男は”俺”には無関心だったけど俺の”頭脳”には関心があった。
成績優秀、スポーツ万能。
生徒会長といったものも中学の時やらされた。
人を導いて決断して行く力…そういったものを新しい父親は俺に求めた。
将来、会社を継がせる為に。
「親が決めた学校に行くのが嫌で、将来家業を継がせようとする義父が嫌で。でも、子供だから一人で生きて行く事も出来なくて。中学出るまで我慢した」
鷹子の話に感化されて、俺は自分の事を話しだす。
「身一つで出てきたけど、家を出た所で状況は何も変わらなくて。中卒の家出人を雇ってくれるような所なんてないし。途方に暮れてる所を今働いてる所の親方に拾ってもらって、仕事教えてもらってる」
口では大人ぶった事言っても、いざ社会という荒波の中に放り出されると何もできない。
「親が嫌だ、家が嫌だって言うのは簡単だ。じゃぁ、メシ食って風呂入って寝る場所を与えてくれてるのは誰?
親だろ?
1日で自分が使う金を計算したことあるか?
それを稼ぐにはどうしたらいいかとか考えた事は?」
俺の問いかけに、鷹子は弱弱しく首を横に振る。
「1日、たった500円を稼ぐだけでも途方にくれるんだよ。
バイトするにも住まいとか年齢とか色々関わってくるし」
何気なく使うお金。
だけど、稼ごうと思ったらとても大変な事なんだ。
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