タカも居ずまいから。

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その日は合同体育祭前日とあって1日体育祭の準備に追われていた。 進行の打ち合わせや最終確認、各担当との連絡事項の確認など。 慌ただしく時間は過ぎて行った。 「みんな、お疲れ!今日は早めに片付けて帰りましょう!」 準備がほとんど出来たところで美倉先輩が実行委員会のみんなにそう告げた。 今日は土屋さん、まゆりも参加している。 「今からちょっとだけ前夜祭的な事を実行委員会だけでするからサロンに集まってちょうだい」 そう言われてぞろぞろと歩いてサロンへ行く。 中ではオードブルやドリンクなどが準備されていた。 給仕の女性や男性まで居る。 誰かの家の使用人さんだろうか。 各々の手にグラスを配られ、ブドウジュースやリンゴジュースが注がれる。 「明日は一番忙しくなると思うから、しっかり食べて備えるように。今日は無礼講だ。みんな楽しんでくれ」 狩場先輩が乾杯を言うと、みんなは渇いたのどをジュースで潤していく。 「…鷹子、ちょっと悪いけど私…」 まゆりが真剣なまなざしで私に言う。 「本気で食べてくる」 「い、いってらっしゃい」 まゆりの本気を止めることはできない…!! 手当たり次第お皿に盛りつけて素早く口の中に食べ物を放り込んでいる。 その所作はマナー教室で学んでいる事を生かしつつ食事をしているので決して下品ではない。 「…あいつ、すげーな」 まゆりを見ていた私に土屋さんが話しかけてきた。 「あ、土屋さん。お疲れ様でした」 「あー、その、土屋さんって呼ばなくていいよ。蒼真で」 「そうですか?では蒼真さんと呼ばせてもらいますね。私の事も鷹子と呼んでください」 「あぁ、まぁそれでいいや。まゆりの連れにしては上品だな」 「いえ、そんな事はないですよ?」 こうして土屋さん…蒼真さんとゆっくり会話するのは初めてだ。 「蒼真さんとまゆりってバイト先が同じなんですよね?どのバイトで同じなんですか?」 まゆりは複数のアルバイトをしている。
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