タカも居ずまいから。

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「はー、一先ず休憩!!」 まゆりが笑顔で戻ってきた。 その手には上品に盛り付けられたローストビーフやキッシュなど。 「はい、まだ全然食べてないでしょ?」 まゆりが私に差し出してくれた。 「ありがとう」 私は素直にそのお皿とフォークを受け取る。 蒼真さんと話し込んでいて、全然食べていなかった。 「あ、悪い。俺が喋りすぎた」 「そういう蒼真だって今じゃないと食べられないものもあるでしょ?」 「そうだな。俺もちょっと本気出す」 「ほどほどにね(笑)」 まゆりは蒼真さんを送り出す。 「2人ってなんだか息ぴったりだね」 「そう?似た者同士だからかなー」 「誰と誰が似てるって?」 第3者の声がした。 誰だろう、と振り返る前に。 「まゆりちゃーん、ぼくが居なくてさみしかった?」 まゆりにべたべたしてきたのは西園寺さんだった。 「…気安く触らないでくれる?せっかく楽しんでたのに興ざめしちゃうわ」 まゆりは西園寺さんに辛辣だ。 「まったく、僕の許嫁はつれないねぇ」 「許嫁だとか思ってないんで」 「そう言いながらも誰とも付き合わずに来たでしょ?」 「…誰のせいだと思ってんのよ」 心底嫌そうにまゆりが吐き捨てる。 「それって僕のせい?」 まゆりに心底嫌がられていても楽しそうにしゃべり続ける西園寺さん。 私ならこんな態度取られたら心が折れそう…。 「まぁ、多少はちょっかいかけたりはしたけどそこで諦めるならそれまでって事だよねぇ?」 「…卑怯って言うのよ、それは」 「褒め言葉だね」 ふふっと笑う西園寺さんの笑顔が、私はやっぱりあまり好きじゃない。 にこにこしているけど、腹の中では何を考えているか分からないからだ。 「僕はただ純粋にまゆりちゃんの事が好きなのになぁ」 「もう、しつこい!あっちいこ!!」 まゆりは西園寺さんを振り払って私の腕を引いて場所を移動した。
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