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しかし、俺が笑っていたのに気づいたのか、兄貴はパンチがクリーンヒットした顎を擦りながら、ムクッと起き上がってきた。
相も変わらず、打たれ強すぎるだろと俺はその打たれ強さに少し引く。
「いたた…全く、手加減しろよ…」
「健心(たつみ)兄ちゃんが昼間からエロゲーやるから、ダメなんだよ。ったく、人の気もしれっつーの…」
そういって、横目で俺は健心兄ちゃんの姿を一瞥する。
黒髪の短髪に、俺とは違うハーフの印であるブルーの綺麗な瞳。
親父と一緒の黒の瞳を持つ俺にとって、健心兄ちゃんのブルーの瞳は正直いって憧れている。
しかし、
「うっせー、バカ!!『レヴァリイア戦記』をバカにしてんじゃねよーだ!!
――って、いつみたいに突っ込んでくれよ、一…」
そう、彼はれっきとしたオタクであり、そのせいで大学でも少し浮いた存在となっている。
だが、俺がいつものようにエロゲーを馬鹿にしないのが、不思議に思ったのか、兄貴は俺の顔を不安そうに覗き込んだ。
俺はゆっくりと目を閉じ、今日の事を話した。
「俺、ふられたんだ…。しかも、見に覚えのない濡れ衣付きで…」
健心兄ちゃんはそれを聞いた瞬間、顔をうつむきにして、肩を震わせながら――
「ざまぁ!!」
爆笑していた。小学生が間違えた子を徹底的に馬鹿にする勢いで爆笑していた。
流石にうっとうしかったので、背中に一発蹴りを入れてやった。
「っ~」
兄貴は痛みに顔を歪ませながら、突然真剣な顔つきで俺に言った。
「初心に戻れよ、リア充」
そういい放って、ポンと俺の頭に手を置いて、しばらくしてから、自分の部屋に戻っていった。
(初心ねぇ…)
俺は兄貴に言われたことについて考えていだが、少々疲れていたので、近くのソファーで寝ることにした。
そして、ソファーの上に横になり、夢の中へと意識を手放した。
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