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昼休み、教室の喧騒とはおおよそかけ離れた図書室に俺は「俺の彼女」に呼ばれた。
正直いって、俺は教室でバカやってる方が性にあっているのだが、男として彼女の頼みを無視は到底できない。
俺は、初めての彼女の積極的な行動に戸惑ったが、反面少し期待を胸に抱いていた。
俺はドアをそーと開き、彼女の姿を確認する。
綺麗な長い黒髪に茶色ベースの丸眼鏡、少しふっくらした胸、モデルのように可愛いといった容姿ではないが、少し気弱で可憐で素朴そうな文学少女がいた。
右手で本を大事そうに持ち、本棚に背を預けて立っている。
――うわあ…
相変わらず様になってるな…
俺は終始、別世界のお姫様のような彼女に見とれていた。
彼女は俺の視線に気づいたのか、右手で持っていた本で顔を隠していた。
俺は、ニッと笑い返して、ゆっくりと彼女に近づいた。
「で、話ってなんだ加奈?」
俺はそう優しく微笑んで加奈に尋ねた。
「一(はじめ)君…
それは、えっと…あの…」
加奈は顔を真っ赤にしながら、しどろもどろになりながらも、俺の質問に一生懸命に答えようとしている。
俺は相変わらずのシャイな加奈の様子に苦笑しながら、彼女が落ち着くまで待った。
そして、俺自身も無意識に心臓の鼓動が早まっているのに気づいた。
――加奈にどきどきしてんだよな…落ち着け、俺…
俺も深く息を吸い込み、吐き出す――深呼吸を繰り返した。
その時間は、実際は数十秒だったのだろう?
しかし、俺にとっては気を落ち着かせるための十分な時間となった。
そして、一回深く深呼吸した俺は、彼女をじっと見つめた。
彼女も俺を見つめ返し、覚悟を決めたような目であった。
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