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「一君…。私と…私と別れて下さい!!」
だが、彼女の口から告げられたのは、正常な男子高校生が喜ぶ「キスしよ」とか「ギュしてほしい」とかいったチョコレートのような「甘い言葉」ではなく………
ブラックコーヒーのような眠気覚ましにはちょうどよい、とても「苦い言葉」であった。
俺――いや、俺達にはその加奈の言葉で、一瞬時が止まったような感覚に陥った。
だが、無情にも時計の秒針を刻む音が耳に聞こえ、これが「リアル」だとわからせてくれた。
え?ワタシト、ワカレテクダサイ?
何バカな事言ってんだよ、加奈?
いつもの俺なら、そう言って茶化したり、笑ってごまかす。
しかし、どうにもこうにも今俺が見ている彼女の目は、大粒の涙が溜め込んであり、体も小刻みに震えている。
そのサインだけで、「モトカレ」の俺にも、この娘が勇気を出して、思いを伝えた事がわかった。
同時に、これは「リアル」で、ドッキリでも嘘でもない…
俺は終始、唖然としていたが、恐る恐る口を開いた。
「でも、付き合って一ヶ月だぜ!俺に何か不満でもあるの?」
俺は、少し強い口調で尋ねてみる。
どうしても、自分をフる理由を聞かなきゃならないと思ったからだ。
だが、彼女は答えさえも言ってくれなかった。
「自分の心に聞いて下さい!!この浮気者!!」
泣きながら、彼女は俺の頬をぶった。
そして、俺は大好きな彼女に平手打ちをくらい、何が起きたのか、わからなかった。
だが、俺の体が痛みを訴えている場所は「左頬」だけではなかった。
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