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俺はまだ痛みの引かない頬を左手で押さえ、昼休みの喧騒に包まれている2年2組の教室に帰ってきた。
外にいる俺の耳にも、やかましい話し声が聞こえてくるのだから、よっぽどうるさいんだなと俺は、半ば呆れながら、ドアを開けた。
「ただいま~」
俺は皆を心配させまいと、得意の空元気で、笑顔を作った。
俺が帰ってきたのを確認した悪友達は、待ってましたとばかりに質問を飛ばせる。
「一、彼女と図書室で何してきたんだ?」
「まさか、俺らのアイドル加奈ちゃんに――手を出したのか…」
「許さんぞ、有明一ェェ!!」
しかし、その行動が裏目に出たのか、悪友達が俺に対する質問なのか、罵声なのかわからない言葉を浴びせてきた。
――「手」を出されたのは、俺なんだがな…
俺は、これ以上空元気な態度を続けると、加奈を好きな奴になにされるか、予想がつかなかったので、むさい男共に囲まれながら、説明することにした。
「アハハハ…。俺、加奈にフラレたんだ。
しかも、覚えがないのに、浮気者扱いされてるし…」
俺は、一言一言さっきの胸が痛くなるような思いも込めて、話した。
しかし、
「ざまァねぇぜ!!」
「俺にも、春がキタ~」
「加奈ちゃん、フリーだよな?
よし、コクろう!!」
など、励ましの言葉すらなく、腹を抱えて笑っている悪友達に、俺は久しぶりに怒りを覚えた。
――人の気も知らないで、こいつら…
「いやはや、可哀想ですね…
有明一君」
俺が、そいつらにキレかけていると、俺は今一番声かけられたくない奴に声をかけられた。
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