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「……へぇ。ゆーちゃんって、鋭いんだね」
沙希音は微笑んだ。
いつか見せた、感情の読み切れない深い笑みを。
「ゆーちゃんの質問に答える前に――聞いてもいいかな?」
気のせいだろうか。
沙希音を取り巻く空気が変わった。
春の日差しのようにな穏やかだった雰囲気が、無慈悲に命を刈り取る冷徹な氷河を思わせる雰囲気に一転した。
身体中が危険信号を放っている。
――今すぐこの少女から離れろ、と。
――これ以上沈んだら二度と戻れなくなる、と。
「……ええ。構わないわ」
それでも。
私は怯む訳にはいかない。
退路なんて、とうの昔に切り捨てた。
私には私の成すべき使命があるのだから。
それを達成するまで、私は前に進み続ける。
「……あははっ。やっぱりゆーちゃんは面白いなぁ」
無表情故に不気味に移る笑顔。
先ほどまでの沙希音とは、まるで別人のようだ。
「わたしがゆーちゃんに聞きたい事は一つだけ」
これが学園小町の本当の姿――しいては、七不思議たる由縁なのだろうか。
「ゆーちゃん。きみは、誰に救いを求めてるのかな?」
「……救いなんて、求めてない。私は私の成すべき使命を果たすだけ」
「使命を果たした後はどうするの?」
「……っ」
復讐を達成した後。
その先には、何があるのだろう?
昔のように、また驟雨たちと笑い合える幸せな日々?
彼の隣で、ずっと笑顔でいられるような幸せな未来?
「……復讐を果たした先に、私の居場所はないわ」
ある訳がない。
あっていい訳がない。
私は……もう、戻れない。
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