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「ふーん……ま、いいけどね。そんな破滅的な未来もまた一興だし」
初めから質問自体に意味が無かったのか、沙希音は適当に話を流した。
「いいよ、それじゃあゆーちゃんの質問に答えてあげるよ――答えは正解。わたしは、意図的にゆーちゃんに嘘を付いた」
平然と悪びれる事なく肯定した。
「…………」
「あはは。そんな怖い顔しないでよ、理由はちゃんとあるから安心して?」
沙希音は部屋の奥にある本棚から、とあるファイルを持ってきた。
「はい。ゆーちゃん」
数枚の書類が挟まった、緑色のクリアファイルを手渡される。
「……見ろ、という事かしら?」
コクン、と彼女は頷いた。
「……分かったわ」
恐らく、このファイルには駄弁り部が今までに集めた情報が収められているのだろう。
ファイルからは表面上だけではない、歴史の重みを感じる。
でも、そのファイルを何故……?
理由を探るべく、私はファイルを捲り、中の書類に目を通して――
「――っ!?」
声が出なかった。
息が止まった。
思考が停止した。
ファイルに挟まれていた書類――より正確には、ある人物の履歴書を見て、私は愕然としてしまった。
何故、この人間が……!?
「沙希音、これは一体――!?」
「――駄弁り部(わたし達)がこっそり手に入れた、明後日新しく赴任してくる先生の情報だよ」
沙希音は意味ありげな視線を向け、ある幼なじみのようにため息を吐いた。
「出来ればゆーちゃんには見せたくなかったんだけどね……まあ、そっちの方が"噂"としては面白そうだから問題ないけどっ」
見せたくなかった。
つまり、私に見せる事で不都合が生まれる?
その不都合は誰に取っての不都合?
――解答は、ファイルに写されていた。
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