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あいつは十中八九、私や驟雨たちの存在を認知している。深い因縁に結ばれた、私たちの事を。
しかも、沙希音を使って私へ情報を流れる事を防いだという事は――恐れている?
私を?
空を?
驟雨を?
「…………」
……いえ、違う。
私は何か、根本的な事を見落としていないか?
考える。
内なる記憶に自問する。
あいつは何故、教職に復帰した?
あいつは何故、私達がいるこの学園にわざわざ赴任してくる?
あいつは何故、沙希音を使って情報が流れる事を防いだ?
――あいつは何故、私達に直接接触してこない?
「…………もしも」
……もしも、間接的にでしか接触出来ないのだとしたら。
……もしも、下手に私達に接触した場合、自分に都合が悪くなるのだとしたら。
……もしも、学園の治安に刺激を与えたのは、目的上の過程でしかないのだとしたら。
「……だとしたら」
今しかない。
私にとっても、あいつにとっても、後にも先にも今しかチャンスは存在しない。
無論、私にこの機会を逃すつもりは毛頭無い。
恐らくはあいつも。
「……もういいわ、沙希音。ありがとう、私は用事が出来たから失礼するわ」
「あの人の居場所、教えてあげようか?」
「……ええ、お願いしようかしら」
「せっかくわたしが力になってあげるんだから、せいぜい面白い展開にしてよね~?」
「善処するわ」
私が責任を持って、全てを終わらせる。
学園の為にも。
沙希音の為にも。
そして。
彼の為にも。
これ以上、私とあいつの因縁に、みんなを巻き込む訳にはいかないから。
最後。私は沙希音に優しく微笑み、駄弁り部を後にした。
*
自分の都合で学園の治安を乱しておいて、再び「教師」を名乗ろうとするとは……。
なかなかに良い度胸。
器が大きい、とでも言うのか。
殺意が湧くくらいには魅力的ね。
「――ようやく復讐出来るわ」
先程から、頬のにやけが止まらない。
さながら、明日遠足に出掛ける幼稚園児のように。
私は、この狂気的な高揚感の赴くままに笑った。
どちらが先に、相手を潰せるか。
さあ、始めましょう。
素敵な素敵な潰し合いを――
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