訪問者

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疲れた身体で真司はアパートの階段を上る。 スーツを身に纏い、昼は営業周りに勤しみ、夜はデスクワークで残業の日々。 変化のない日々をただ消化していく毎日。 木造アパート築四十五年、家賃五万五千円。部屋はワンルーム。 贅沢という贅沢をする事もなく、真司はこのアパートに住み始めてもう八年。 就職と同時に住み始めたが、当初は大きな夢を抱えていた。 ー 五年後には駅近の新築マンションに住む!! ー しかし真司が目標として掲げていた五年という月日は無常にもあっという間に過ぎ去り、そこから更に三年が経過してしまった。 階段を上りきった真司は、廊下の突き当たりに位置する自身の部屋の鍵を開けるとさっさと部屋の中に入って行った。
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