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「お前、施設がこわいって言ってたよな。それって殺し合いの事か?」
「それもあるけど違う」
逃げてきたといっても、アオは今まで99人…いやそれ以上もの実験体を殺してきたのだろう。人を殺すこと以上に怖いことが施設にはあるのか?
ふう、とため息をついた。むずかしい話は終わりにしたいが、まだ聞く事はある。
「逃げてきたのはお前だけか?」
「違う。『少女達』全員で逃げてきたけどはぐれた」
「15人全員が逃げたのか!?どうやって?監視するやつとかいるんじゃねぇの?」
「わたし達の力を侮っちゃだめ。今までマスターには従ってきたけど、もうだめだと思った」
マスター?チェーンズのボス的な存在だろうか。
「アオ達は追われてんだろ?さっきのヤツらみたいなのに」
「うん。わたし達はチェーンズが実験してきた全てだから、『少女達』全員を失ったらチェーンズは終わり」
「じゃあ今すぐ警察に行けば…」
言いかけて気づいた。
この異能な力を持った『少女達』は、チェーンズが国から追放され、無くなったあとどうなるのだろうか。
約100人もの人を殺した殺人鬼のような少女達が、世間に受け入れてもらえるわけがない。すぐに殺処分されるか、死ぬまで牢獄の中で生き続けるかだろう。
そうなったら、なんのためにアオや、他の『少女達』が生き残ったというのだ?1500人の頂点に立った15人は、なんのために生きてきたというのだ?
体にさまざまな薬を盛られ、血生臭い場所で生きてきた意味がまるでない。そんなのは絶対にだめだ。
「……チェーンズを潰したとしても、お前らは生きられるか分からねぇんだぞ。お前らは施設に帰ったほうがいいんじゃねぇか…?」
言い終わった直後、バリンと破裂音がリビングに響いた。
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