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「絶対いや。帰らない」
そういうアオの手には、割れたコップの破片が握られていた。
ポタポタとオレンジジュースとアオの血が机にしたたり、小さな水溜まりを作る。
「…だよな」
施設では死ぬことより辛い実験が待っているのだろう。絶対にアオを帰すわけにはいかない。
あれ、いつのまに俺、こんなガキの事真剣に考えてんだよ。らしくねぇな。
「わたしは逃げてる途中で、『少女達』を助けてくれるような力をもつ人を探してた」
「……?どうやって?」
「超音波だしてた。わたしと似た力を持つ人と共鳴するように」
超音波まで出せるのかこの少女は…!!
「で、だれか見つかったのかよ?」
「キミだよ」
「ふーん」
…………………。
………………………ん?
「俺!!?」
「うん。体のどこかが痛くならなかった?」
体のどっかしらが…って、今朝の頭痛のことか?
俺が!?力を!?持ってる!?
「バカ言え!俺は超平凡高校生だ!力なんて持ってねぇ!!」
「持ってないなら共鳴しない」
アオは血で濡れた己の手をペロペロ舐めた。
すると、あっと言う間に傷が治っていく。すごい。
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