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「寒っ」
日は出ているものの、気温は1度しかない。マフラーをしていても首が寒いのはどうなっているんだ。
風に当たったことで、頭痛が少し和らいだ。痛みを紛らわせるためイヤホンをし、ポケットに手を突っ込み、ズンズンと歩を進めていく。
片手でウォーク●ンをいじり、耳元からは某ロックバンドの曲が流れだした。いい曲だ。
すると、前を見ていなかったせいか何かにぶつかった。お腹のあたりに軽い衝撃が伝わる。
「…ん?」
下を見ると、くりくりした目があった。視線が混じり、沈黙。
ぶつかった相手は小4・5くらいの女の子だった。それだけなら普通にぶつかっただけかと思われるが、よくその少女を観察するとおかしなことに気づく。
まず、こんな真冬なのに半袖の白いワンピースを着ている。しかもそのワンピースは泥遊びでもしたかのように汚い。
それとランドセルを背負ってない。今は小学校も授業中のはずだ。
あと髪の毛が真っ白。いや、銀髪というのか。目の色も左右で違う。右目が灰色で左目が赤色。おかしい。外国でもこんな目の人間はいないはず。
余談だが、第一印象は「可愛い」だった。
「たすけて」
少女が口を開いた。
「……は?」
「たすけて」
同じ事をまた呟く。
「いや、ちょっと待て。お前親はどこだ?なんで学校に行ってない?」
「たすけて」
スルーだ。
どうしたものか、と頭を抱えていると、バタバタと複数の足音が聞こえた。
「…な、なんだあいつら」
刑事ドラマに出てきそうな格好をした男達が、手に銃を…しかもかなりデカいやつを持って走ってきた。こっちに。
「いたぞ!そこのお前、そのガキを捕まえろ!!」
お前とは俺の事だろう。そしてガキとはこの少女の事か?
「たすけて…!」
俺の陰に隠れるように少女は姿を隠そうとする。
銃を持った男達との距離は25メートルほどだ。
「ま、待て。あいつらは誰だ?お前の知り合いか?」
「悪いひとたち。たすけて」
少女がガタガタと震え始めた。それが寒さによるものではないと直感でわかる。
意を決して、俺は少女を抱きかかえ、男達とは逆方向に走り出した。
いつのまにか頭痛はなくなっていた。
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