桐生蓮という平凡な高校生の日常

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ぜぇぜぇと肩で息をする。喉が切れそうなほど痛い。 水筒の温かいお茶を飲むと少し落ち着いた。 疲れるのも当然だ。重さ30キロ程度の少女を抱っこしながら隣町の公園まで走ったのだ。距離にして約5キロ。我ながらすごい。 今は公園の洞窟のような遊具に隠れ、休憩中だ。 2キロほどあの男達と鬼ごっこをしたあと、いりくんだ裏道を駆け抜けた俺はやっとのことでやつらを撒いた。 「さ、さすがに、もう、追ってこないだろ…」 地面に座り込み、息を整える。 「…で、お前はなんで追われてたんだ?」 傍らで砂をいじる少女に視線を移した。 セミロングの銀髪が冬の風にサラリと揺れた。 「ありがと」 スルーだ。 「お前名前はなんだ?どこに住んでる?」 「ここどこ?」 またスルーだ。 「ここは公園の遊具の中!隠れてる!ニホンゴワカリマスカ!!?」 この子はなんなんだ! 「へんなの」 薄い微笑みを返されて、不覚にもドキリとした。 「わたしはOAってなまえ。over abilityの略。家はありません」 「名前がover abilityっておかしくないか?直訳したら『能力を越える』だぞ」 「そのまんま」 そのまんま…? 「わたしはチェーンズの実験体。『黒い鎖の少女達』のナンバー4」 「ちょ、ちょっと待てよ。チェーンズの実験体?黒い鎖の少女達?なんだそれ?」
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