crying T Day 1 (1)

4/12
前へ
/14ページ
次へ
 秋峰探偵事務所  それが恭介の所有しているこのオフィスの名前。探偵事務所という名が示すとおり、探偵業を営んでいる。  従業員は彼一人。そのためオフィスの掃除、会計などの業務も一人でこなさなくてはならない。  恭介はオフィスを見渡す。デスク前には接待用ソファテーブルが配置されている。  二人掛けソファをテーブルを挟んで向かい合わせに配置しているが、今はソファ、テーブル共に受けた依頼をまとめたファイルや資料に埋もれている。  その他の場所も似たような状況だった。整理するための本棚だけには莫大な量のファイルなどを収めきれず、床へ直に積み上げられる。山は本棚の前だけではなく、壁側ほぼ全てに構築されている。おかげで学校の教室ほどはあるオフィスが随分と狭く感じる。  仕切りで区切っているベッドスペースも似たような状況で、彼は四六時中ファイルや資料に囲まれた生活を送っていた。  いい加減片付けをしないとお叱りを受けるなと苦笑する。今この場にはいないが、恭介にはここで寝食を共にしている人物がいる。その人物はこの惨状――恭介自身酷く散らかっていることは自覚している――を許せない性格らしく、毎日のように小言を洩らしている。  最近はずさんだった会計の整理を時折引き受けてくれているので、恭介は強く出ることが出来ず、ストレスが溜まる要因になっていたりする。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加