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野々村が褒めると、あんずははにかんで、
「お手伝いでいつもしてるから」
と言った。あんずは、あまり家事を苦にしないタイプなのであろう。だが、家族の役に立ちたいと、いつでも背伸びをしてしまっているような印象を受ける。
野々村は自分の娘が小さいときはどうだったかを思い出そうとしたが、あまりにも接点がなさ過ぎて思い出せなかった。ただ、疲れて帰ってきた夜に見る子供たちの寝顔がとても可愛らしく愛しく感じたことと、たまに起きている子供たちに会うと、まるで知らない人のように人見知りされたこと。そして、それでも守りたくて、がむしゃらに働いたことしか思い出せなかった。
「あんずは家族が大好きなんだな」
野々村が言うと、あんずは「うん」と頷いた。
「だから、できることをしたいの。あんずはイイコじゃないといけないから」
あどけなく笑うあんずの表情に、子供らしからぬ色が浮かんでは消えた。
野々村は「そうか」と、頷いた。それしか言えなかった。
瞬く間にすじがとられて、青臭い、夏の匂いを振りまくスナップエンドウがザルにいっぱいになるのを見ながら、野々村はなんとも言えない気持ちをもやもやと抱えていた。
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