茶飲み友達

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しかし、小さな茶飲み友達が来てくれると、そんなことはすっかり忘れてしまう。一人ではない部屋はあたたかく、この時だけは野々村は孤独ではなかった。 ワクワクと好奇心のかたまりのような顔で野々村の手を見つめるあんずに野々村は笑った。 「そんなに見つめられると、手元が狂いそうだよ」 「だって、どうなってくのか見たいよ」 野々村は「たいしたことはしないけど」と苦笑しながら、蓋をした小どんぶりを熱くないように台拭きで用心深く持ち上げ、電子レンジに入れた。 「あとは待つだけだ」 電気屋で一番安かった電子レンジはあたため機能しかないが、それで十分、事足りていた。 「それだけ?」 「あぁ」 目をまんまるにして、電子レンジを見上げるあんずに野々村は頷いた。 「それだけで、できちゃうの?」 「そうだよ」 あんずに重ねてたずねられ、野々村は笑った。若いときは外食やスーパーの弁当で良かったが、歳とともに食も細くなり、そういったものが食べにくくなってきてからというもの、元より炊事に苦手意識のなかった野々村は、いかに手を抜いて食事を作るかをそれなりに熱心に追求した時期があった。
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