茶飲み友達

10/15
前へ
/33ページ
次へ
「ののじぃ、いる~?」 いつものように、あんずが少しドアをあけ、野々村を呼んだ。 「いらっしゃい、入っておいで」 野々村は座ったまま玄関にいるであろう、小さな茶飲み友達を招いた。 まだ炬燵を出すには早い10月だが、野々村の部屋のテーブルは炬燵になっていた。もっとも、さすがに電気は通っておらず、布団がかぶっているだけであったが――。 「おかえり」 「ただいま」 ひょこりと顔を覗かせるあんずに、『おかえり』というようになったのはいつ頃であったか……。そんなに遠い昔の話ではなかったが、ごく当たり前の挨拶となりつつある。 「なんか、いい匂いがする…」 部屋に上がりながら、あんずは鼻をすんっと嗅いだ。 「そうかな。少し早いとは思ったんだが…」 野々村は笑いながら、テーブルに無造作に置いていた茶色い紙袋をあけた。中からは、金時色のサツマイモが香ばしい香りをふりまいていた。 「焼き芋?」
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加