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出会い
野々村とあんずが初めて、挨拶以外の言葉を交わしたのは四年前の秋。
近所の子ども……野々村から見たあんずへの認識はその程度だった。
野々村の妻は仕事に没頭し、家族を顧みない野々村を捨て、子供たちと出ていった。一人で住むには大きすぎる家は、今は人に貸して、年金で暮らす野々村の副収入となっている。
子供たちも大きくなり、それぞれ結婚して、子も生まれたらしい。時折届く近況には、子どもの写真と優しい一言が添えられているが、忙しいからか野々村に会いたくないからか、一度も来たことはない。
あまりいい父親じゃなかったし、いい夫ではなかったから、がむしゃらに働いて家族のために建てた家は人に貸して、自分はそんなに広くないアパートの一室で暮らしている。
働きすぎた体は数年前からパーキンソン病を患い、足は動かしにくい。歳も75をこえ、致し方ないとあきらめることが多い日々だ。
いつものように、タバコを買って帰る途中で、しくしく泣いている子供がいた。
それがあんずだった。
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