悩みの一つ

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  僕がまだ此方の世界にいた時の話。学校の放課後、僕は友達とこれから何をして遊ぶか話していた。 「海哩、今日はカラオケしに行かない」 「えぇー、琉梨と僕だけじゃつまらないじゃんか」 「九条君も一緒って言ったら勿論行かない訳にはいかないよね」 勿論行くと素早く答えると青春だねと笑顔で返された。今僕と話しているのは橋本 琉梨。彼女は僕の女友達であり親友だ。 九条 仁は隣のクラスの男子。最近少し気になってる奴。だからこんなチャンスは嬉しい。正門の前に行くと仁に話しかけた。 「仁、久しぶり。と言っても朝会ったけどね」 「なんだ、お前も来るのか海哩」 「来たら悪いのかよー」 ふざけたように僕と神は笑いながら言う。 「二人より三人の方が楽しいからさ、良かったと思うぜ」 仁は僕に笑顔を見せた。その笑みにどきりとしながらも平静を装い言葉を返したが声が少し小さくなってしまった。 カラオケボックスに入ると恒例のカラオケ大会が始まった。 「空に願い星~」 やっぱり琉梨は上手いなぁ。採点は89点とテレビ画面に書かれていた。前来たより点数上がってるって事は密かに練習してたな。 「よーし、僕だって負けないからねっ」 琉梨に闘争心を燃やすなんて僕もまだまだ子供だな、と今思った。 「暗闇に浮かぶ紅い月…それを見る片翼の天使は翔ぶ事を夢みてるー…」 採点を見ると95点と書いてあった。という事は勿論。 「よっし、琉梨に勝った」 「あはは…やっぱり相変わらず海哩は上手ですよねー」 「次、俺ねっ」 次は仁が歌う番になった。何故かかなり張りきっている。
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