忘れられない過去

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  「出来れば女性でお願いしたいんだけど…」 喋るだけで疲れる。早くこの濡れた服を脱ぎたい…!さっきより寒気が増している気がするし。 「女性の使用人を希望とは意外にも女性好き…」 今度は目覚まし時計を投げてやった。見事にキス魔の頭にクリーンヒット。流石に今のは痛かったのかその場にしゃがんで悶えている。 「こっちには事情があんだよ。はぁ…キス魔と話してると余計に悪化する」 溜め息を一つ着いてベッドに座った時扉から二回ノックする音が聞こえると女性が入ってきた。 「お待たせ致しました!お呼びでしょうかエルガ様、クローズ男爵」 「海哩の濡れた服を着替えさせてやってくれ。私達は外で待っている」 エルガは未だに痛さに悶えているキス魔を強制的に引っ張って(というより引き摺って)部屋から出ていった。 「それでは着替えをお手伝い致しますね海哩」 「使用人ってカノンだったんだね。それより先に言って置きたい事あるから耳を貸してくれるかな」 「はい、なんでしょうか?」 『僕は訳あって男装しているけど、女なんだ』 部屋の外にいる二人に聞こえないようカノンの耳元で小さな声で言った。 「えぇ!?そうだったんですか!それでは仕方ないですね」 僕は服を脱ぎ捨て、タオルで体を拭くとカノンに持ってきてくれた服を着た。 「髪を拭くの手伝ってもらえるかな」 僕は赤いヘアーゴム(シュシュ)を外すと机の上にそっと置いた。
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