忘れられない過去

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  「とても綺麗な漆黒の髪の毛ですね、羨ましいですわ」 「…ありがとう、カノン」 カノンは僕の顔を見て少し驚いていた。何か変なことでも言ったのだろうか。でも普通にお礼を言っただけなんだどな。 「どうしたんですか?涙が出るなんて」 「え…?」 カノンが驚いていたのは言葉ではなく涙。どうやら僕は無意識の内に涙を流していたようだ。カノンにタオルを貰い涙を拭き取った。 どうして涙が出たのかは正直自分でも不思議。 そういえばカノンが言った言葉ってあの人が言っていたな。幼い頃によく言われたんだ。優しくて大好きな人。でもその人はもういない。二度と会えない所にいるから…。 『海哩…お前は綺麗な髪の毛だな。お前が髪を伸ばせば大きくなった頃にはもっと綺麗な女性になるだろう。その時が来たら[ ]はお前の望んでいるものをあげよう。約束だよ』 僕が最後に聞いたのはその言葉。だからかな。まぁ良いや…今は少し休もう。 「僕は少しここのベッドで寝るけど、さっき言った事は内緒にしてもらえるかな」 「勿論ですよ。それではお大事に、お休みなさい海哩」 僕はベッドに潜り込み毛布をかけ熱が下がるまで休む事にした。
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