忘れられない過去

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  「散歩してたらこの部屋から話し声が聞こえたから来ただけ」 本当は暇だから来ました、なんて言ったら流石に怒られそうだ。病み上がりな訳だしね。 「海哩、まだ寝ていなくて大丈夫なのか」 「もう大丈夫だって。心配かけてごめん」 エルガに心配されてたって思うとほっとしている自分がいる。なんだろうな…この気持ちは。 「私だって心配していたんですよ。エルガ様だけに言うのは不公平では」 「うるさい。元はといえばキス魔が悪いんだろ」 キス魔が僕に近付いて来なければ湖に落ちなくて済んだのにさ。1割は僕の不注意だけど残りの9割はキス魔が悪い。 「その事については深く反省しています。すみませんでした…」 「…と、とりあえず許すけど次同じ事したら許さないから」 「珍しいですね、海哩がすんなりと許してくれるなんて」 許す気なんて最初から無かったけど、あのキス魔が真剣に謝って来たから許してあげた。だって、いつもは見せない酷く悲しそうな顔をしていたから。顔を見ただけで直ぐに分かった。
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