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「……理人?」
あたしの呟きと同時に、上に乗っていた男がパッとあたしがら飛び退いた。
「り、理人さん!違うんです……その、これはッ」
「お前らさ、何勝手なことしてるわけ?誰が暁鬼拉致れっつった?あ?」
ガンを飛ばしながら男に詰め寄る理人。
待って、理人がいるってことは……こいつらは、羅刹ってこと?
あたしがボーッとしながら理人を見ていると、不意に目が合った。
「チッ……お前ら全員、あとで覚えとけよ」
理人がドスの聞いた声で言うと、男たちは慌てたようにして部屋を出て行った。
「……理人?」
あたしが名前を呼ぶと、静かにこちらへ近づいてくる理人。
あたしの目の前まで来るとしゃがみこみ、ゆっくりと丁寧にロープをほどいてくれる。
そしてすべてをほどき終わると、「悪かった」と一言呟いた。
「ねぇ……なんで理人はあたしを助けてくれたの?」
未だに状況が飲み込めないあたしは、首を傾げる。
さっきのやり取りからして、あの男たちもおそらく羅刹の構成員。
そいつらがあたしを拉致ったのに、どうして同じ羅刹の理人があたしを助けてくれたんだろう?
「悪い……今回の件は、俺たち幹部は把握してないことだった。たまたま近くを通った時女の声が聞こえて、それで部屋に入ってみたらこの有様」
そう言って、大きなため息を吐く理人。
幹部たちが把握していなかった?
ってことは、これはあの男たちの独断で行われたこと……
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