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歩いている間、お互い何も喋らない。
二人分の足音だけが、廊下に響き渡る。
歩き続けること数分。
俺はひとつの教室の前で足を止めた。
教室に足を踏み入れると、木材の独特なにおいが鼻につく。
ここは、木工室。
去年の体育祭で、美愛が羅刹を倒した場所だ。
美愛が教室に入ったことを確認すると、俺は静かにドアを閉めた。
「……美愛、お前に聞きたいことがある」
俺がそう言うと、ゆっくりと顔を上げる美愛。
俺はケータイを取り出すと、あの写メを開いて美愛の前に突き出した。
「……ッ!!」
これ以上にないほど目を見開き、口をパクパクさせる美愛。
「……これ、お前だよな?」
俺の問いに、美愛は目を泳がせる。
「何で、これ……」
「何でって聞きてぇのはこっちだ!おい、こいつ誰だよ!?何で美愛とキスしてんだよ!?」
「違う、キスなんてしてないッ」
「じゃあこれは何してるんだよ!?」
黙り込む美愛。
ギュッと唇を噛み締め、小さく震えている。
「おい、何とか言えよ!!」
二人だけしかいない教室内に、俺の怒鳴り声が響き渡った。
それでも、美愛は何も言わない。
……何でだよ。
何で否定しねぇんだよ!
美愛は本当に、この男とキスしてたのか?
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