8.すれ違い

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歩いている間、お互い何も喋らない。 二人分の足音だけが、廊下に響き渡る。 歩き続けること数分。 俺はひとつの教室の前で足を止めた。 教室に足を踏み入れると、木材の独特なにおいが鼻につく。 ここは、木工室。 去年の体育祭で、美愛が羅刹を倒した場所だ。 美愛が教室に入ったことを確認すると、俺は静かにドアを閉めた。 「……美愛、お前に聞きたいことがある」 俺がそう言うと、ゆっくりと顔を上げる美愛。 俺はケータイを取り出すと、あの写メを開いて美愛の前に突き出した。 「……ッ!!」 これ以上にないほど目を見開き、口をパクパクさせる美愛。 「……これ、お前だよな?」 俺の問いに、美愛は目を泳がせる。 「何で、これ……」 「何でって聞きてぇのはこっちだ!おい、こいつ誰だよ!?何で美愛とキスしてんだよ!?」 「違う、キスなんてしてないッ」 「じゃあこれは何してるんだよ!?」 黙り込む美愛。 ギュッと唇を噛み締め、小さく震えている。 「おい、何とか言えよ!!」 二人だけしかいない教室内に、俺の怒鳴り声が響き渡った。 それでも、美愛は何も言わない。 ……何でだよ。 何で否定しねぇんだよ! 美愛は本当に、この男とキスしてたのか?
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