鬼の登場

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私は掴まれていた腕を振り払い 目を閉じ 耳を塞ぎ しゃがんだ。 現実から逃げたくて… 知らないふりをしていたけど… やっぱり自分は気付いていて… 「柚ちゃん…?」 優しくて温かい声が私に聞こえる。 耳を塞いでも届くこの声に 私は反応できずにいた。 「柚ちゃん」 「総司さん…私…」 「柚ちゃん…立って?」 手を握られクイクイと引っ張られる。 「きゃっ!」 引っ張られた反動で 前に倒れてしまった。 「プッ…」 私は「んしょ」と言いながら立ち上がる。 「アハハハハ!おでこ赤いよ!」 「わ、笑わないでください!」 「アハハハハ!だって面白いんだもん!」 笑いすぎて出てきた涙を総司さんは拭う。 「むぅーー」 「ごめんごめん…あー笑った笑った」 「私は笑えないです」 総司さんは私の頭を撫でて 「よく頑張りました」 と言ってきた。 「へ?」 なんのことかよく分からない私は 間抜けな声を出してしまった。
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