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「……結局先輩は行くのですか?」
今日もまたハードな修行があるということでフィックスとチットの二人は部活を早めに切り上げて彼の家がある迷わずの森へと向かっていた。
当然ながら彼の弟子になりたいと言っているヒバリもついていこうとした。けどそれをフィックスは許さなかった。
自分のことを神のように崇めている彼が家の秘密を知るとどうなるか簡単に予想出来る。学校中に秘密を言いふらし自分の平穏な生活を破滅させると。
それだけはなんとか阻止したかったのでフィックスは三十分という長い時間を使って彼を無理矢理納得させた。渋々納得したヒバリの顔は今でも思い出される。
その思い出に浸っていたフィックスの耳に先ほどのチットの言葉が届いてくる。
内容は切り出されたあの時からずっと気になっていたこと、フィックスが今度行われる研修会に参加するかということだ。
正直な話チットはフィックスのことだから参加しないと思っていた。
彼は武人として目立つことを嫌う。こういう若手育成という大舞台には出たがらない性分の人間であると三年ほどの付き合いで簡単にわかる。
「う~ん、考え中」
しかし、そのチットの思いとは違いフィックスはとても悩んでいる表情をしながら答えた。
「何故ですか? 臆病者でチキンな先輩はこういう目立つことは嫌いですのに何故出ようと思っているのですか?」
いつも通りボロクソに、敬意の欠片をいっさい感じられない毒舌を吐く。ただその裏ではとても動揺していた。目立ちたがらない彼が行くことも視野に入れていることに。
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