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「第五学年のフィックスさんですね?」
彼は突然やって来た。ただやって来たわけではない。今や化物までとはいかないがそれなりの実力者となっているフィックスに気づかれることなく忍び寄るように。
それには気功を張っていなかったという理由も含まれているがそれでも普通ではあり得ない。半端な実力者ではないことは確かである。
それを脳で判断する前に体が判断したフィックス。声を聞くなり隣で歩いていたチットの体を抱えてその場を大きく飛んで背後にいる彼と距離を取った。
いきなり体を抱えられたチットは恥ずかしがることを忘れるくらい戸惑っているがそれは軽く無視。機械的に声をかけられた人物を見ながら彼女を下ろす。何にもフォローはなかった。
「子供?」
ここで彼の敵意が消え戸惑いの感情が生まれる。それは自分に声をかけた相手がまだ少年だったからだ。
少年は口元を布のようなもので隠して顔はよく見えないが背丈と声はまだ幼いもの。それから彼が着ている制服はフィックス達と同じようにものだった。
「君はいったい……」
「拙者は決して怪しいものではありません。ただ、貴方様が拙者が捜しているフィックス様かどうかを確かめたいだけです」
「確かに僕はフィックスだけど君のことは全く知らないよ――分析眼を見たら別だけど」
子供ということでヘタなマネは出来ない。それでも得体も知れない存在には変わらない。よってフィックスは分析眼を発動させて彼が何者かを確める。
瞬間、彼の目には今まで見たことがないとんでもないものが映し出された。
「NOデータだって……」
NOデータ。調べることが出来ないというもの。今まで数々のものを調べて結果を出してきた分析眼が人生のエラーを生じた。
フィックスにとってこれほど有り得ないことはない。それと同じくらい彼が得体も知れない謎の人物だという恐怖を感じてしまう。
相手が戦う意志がないとわかっていながらも武器召喚して剣を出して構えてしまう。
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