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「そういうけどチットちゃん、チットちゃんは入部希望者が来ることは楽しみじゃないの?」
「このような寂しい部活に誰も来ないと思っていますから楽しみも何も感情は抱きません」
「でも去年や一昨年は見に来た人は沢山いたよ」
「あれは天文学に興味を持ったのではなく私見たさに来た人達です。事実、影でこそこそと告白されました。もちろん、全てバッサリと完膚なきまでに毒舌を吐いてフって来ましたが」
「やっぱりチットちゃんはモテるね。でも、何でそんなにモテるのに今まで彼氏を作ろうとはしないの?」
それは冴えなく星好きでクズ虫のような――優しい貴方のことが好きだから。そう思っていたチットはいつものように鈍感な言葉を言う彼にあきれ返り内心ボロクソに言っていた。
「もしかして好きな人でもいるの?」
だったのだが、まさかの的を射ている言葉が出てきた。完全に油断していたチットは思わず彼の言葉に体をピクリと反応させ、いつも鈍いくせして何で今日に限ってはピンポイントに言ってくるのだと思ってしまう。
「いや~、まさかチットちゃんにも好きな人が出来るなんて思いもしなかったよ。僕はとても嬉しいよ」
さすがの鈍いフィックスでも今のチットの反応を見てしまえば目の前にいるチットには好きな人がいるということが予想出来る。
珍しく動揺する彼女とは違い、とても晴れ晴れと、まるでお祝いとして赤飯でも炊いてあげようという親のように笑っていた。
当然、このフィックスの反応にチットが何も抱かないはずがない。いつもの鈍感さに加えて自分には何の恋心も抱いていない苛立ち。
それによってあのルサがいきなりフィックスへキスした時と同じような真っ黒いオーラが身体中から滲み出ていた。
このままではチットのクソ虫撃退術の奥義のコンボ技がフィックスへと降り注がれてしまう。
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