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「あんた、うじうじしすぎ。
私が死んだからっていつまでも引きずってんじゃないわよ。ずっと見てたんだからね」
「見てたってどこから……」
「空から」
゙あいづは漆黒に呑まれた夜空を指差す。
俺はそんなあり得ない話を聞いても、何故か馬鹿げてるとは思わなかった。
「私のことを思ってくれるのは嬉しいよ。けど、それじゃ……そのままじゃいけないんだよ。
あんたは生きてるんだから。これからがあるんだから」
「…………」
「だからね。下なんか向かずに、後ろなんか振り返らずに、前を向いて進んで。
じゃないと……私も悲しくなっちゃうんだから、ね……」
そう言って、゙あいづは悲しそうに微笑んだ。
その微笑みは儚げで、切なげで、それ故に美しく見えた。
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