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――胸を突いた、この衝撃は。
「ここにいるのも、やめます。では、ありがとうございました」
一人で納得して、一人で泣き笑いして、一人で駅の改札をくぐっていく。そんな姿を呆然と見送る俺のなかに宿った思いは、恋なんかじゃなくて。
「後ろを振り返らない」――どこか、忘れていたような情熱的な思い。
社会に揉まれて、どことなく荒んでいた諦念にも似た思いを抉るような、強い衝動。
別に、諦めていたわけじゃない。ひねくれていたわけでもない。ただ、強いて言えば、初心とも言うべき感情を呼び起こされたような、そんな気がした。
「……小娘になーにを感化されてんだか」
それでもどこか清々しい胸のうちは、この華やかな街並みさえ美化するように思えて。
駆け足で帰ろうとした街を見て帰るのも、悪くないなと思った。
―了―
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