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あの日から1週間。
先生はやっぱり何も変わらない。
「おら帰れ」
「……今夜は帰りたくない…」
「ワガママ言うな」
雑誌で読んだこのセリフ。
“これで彼はイチコロ☆”なんて嘘だった。
「ねぇお願い、新年は先生と迎えたい」
「ガキはさっさと帰れ」
「俺ガキじゃねぇもん…。もういいよ、先生が何と言おうと絶対居座ってやる!」
玄関から何やら言ってるみたいだけど、そんなの知らない。絶対帰らない。
先生はしばらく文句を言っていたが、強情な俺に諦めたのか、ため息を一つ吐いてコタツに潜り込む俺の隣に腰かけた。
よくわかった。よーくわかった。
先生はやっぱり俺のこと子供だと思ってる。
俺はただ先生が大好きなだけで。
年とかそんなこと、関係ないのに…。
そうっと、少しだけコタツから頭を出して先生を見上げる。
先生はさっきから黙って隣でテレビを眺めたまま、俺の視線には気付いてないらしい。
もぞもぞ動いてコタツから抜け出し、先生にちゅーしてみる。
こっちを見て欲しくて。
そういう雰囲気になって欲しくて。
でも先生は先程より大きく、ため息を吐いただけだった。
「やっぱり先生は俺のこと…」
「あーはいはい、違うから。あのなエリ、好きってのはそういう行為をすることが全てじゃないんだぞ」
「だってしたいもんはシたいもん。何が違うの?」
「相手を思いやって大切にする恋愛、好きだから手を出さない恋愛、世の中には星の数ほど愛のカタチがある。
俺はエリを愛してる。大切にしたい。だから手は出さない」
「……………」
「……………」
「……………」
「何でお前が照れんだよ」
穴があったら入りてぇのは俺のほうだこんちきしょう、と先生は赤く染まった顔を反らした。
その横顔を見つめ、胸がキュウ、と苦しくなる。
そっか、先生はそんな風に俺のこと…
嬉しいよ、先生。
ありがとう、やっぱり大好き。
だから俺も…、
「エリ?ちょ、お前何して…」
先生を大切にしたい、思いやりたい。
「お前聞いてなかったのか!?」
「俺も先生を大切にしたい」
まずは手始めに、
さっきからずっと辛そうな先生のを楽にしてあげるんだ!
「待て待て待て待て!」
先生、こんな愛のカタチもあるんだね。
どんなカタチでも、俺が先生を愛してることにやっぱり変わりはないんだけれど。
おしまい。
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