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放課後、サッカー部の怪我人の治療から帰って来ると、
俺の机に見慣れた細い背中が見えた。
やっぱり俺の考えすぎだったらしい。
小さな寝息を聞いて。
今、心の底からほっとしている。
無防備に眠るエリを見つめ、顔にかかる栗色の髪の毛を拾い上げる。
髪の毛一本一本までもが愛しくて、
サラサラと手の中を流れる柔らかい髪に、優しく唇を落とした。
暖かい飲み物でも買ってこよう。
エリが好きな甘いココアを飲んで、今日は沢山話そう。
そう思っていたのに。
自販機から帰ってくると、もうそこにはエリの温もりしか残っていなかった。
『えー、冬休みだからと言ってハメを外しすぎないように。休み中は勉学に勤しみ…』
終業式
教頭がだらだらと長い話をしているが、浮かれ気分の生徒たちの耳には半分も届いていないだろう。
俺もそのうちの1人だ。
昨日は結局話すことは出来なかったが、今日はパレードを見に行く約束がある。
実はこれがエリとの初デートだったりする。
まるで初恋のようにドキドキして。
いい年したおっさんが気持ち悪い、なんて思っても、顔を緩ませずにはいられない。
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