17人が本棚に入れています
本棚に追加
駅前の柱の向こう、後ろ姿でもはっきりわかる。
知られちゃまずい関係だから、人目に付かない夜に待ち合わせた。
待ち合わせ時間が待ち遠しくて、予定より少し早く着いてしまったのに、
エリは既に待っていた。
小さな一つ一つのことが嬉しい。
でも浮かれきってしまってはいけない。
俺は気を引き締め直してエリに声をかけた。
「先生、随分早いね」
「早いのはエリだろ。それから外で先生はやめろ」
「あ、そっか。じゃあ、緑川…さん?」
赤い鼻で首をかしげるエリに、さっき引き締めた気がまた緩む。
いかんいかん。
「パレード、このすぐ近くなんだ」
エリの言うようにここから程近いようで、パレードに行くと思わしき人の流れが出来ていた。
人混みに混ざり、白い息を吐きながら遊園地に向かう。
予想以上に寒くて、
かじかんだ手に、手袋持ってくりんだったと後悔したその時、
寒さに耐えるために固く握りしめた掌が、
暖かい何かに包まれた。
最初のコメントを投稿しよう!