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「あー、和むわぁー」
「保健室は生徒の傷を癒す場所だ。お前が和むとこじゃねぇ」
「これでニヤけた面のやつがいなけりゃ最高だな!」
「……………俺そんなにニヤけてる?」
「ニヤけてるニヤけてる。気持ち悪ぃぞ、お前」
相川の言葉に、ぐにぐにと頬を揉む。
気を付けないとな。
「なに、彼女でもできた?」
「い、やぁ~?そういうわけでは、ないけど…ねぇ?」
「何が“ねぇ?”だよ。まあそんなことはどうでもいい。それより、明後日のクリスマスイブ、どうせ暇だろ?寂しい独り身同士集まって飲まねぇかって話があるんだけど」
お前も行くよな、と言いたげな目を向ける相川。
「あー…、ごめん。俺無理」
「やっぱりお前女が!?」
「いや、彼女…ではねぇ、よ?」
「あやしー…」
「うるせぇな、お前次授業だろ、チャイムなるぞ」
「ぅお、やべ。それを早く言え!」
慌てて立ち上がった相川は、ストップウォッチとメガホン片手に生徒の待つグランドへと駆けて行った。
特にすることもない俺は、窓からグランドを眺めることにした。
相川の号令で走り出した生徒の中に、目当ての頭を見つける。
息を切らしながら走るエリを眺め、本当にこれでいいのだろうか、と考える。
いいか悪いか聞かれたら、勿論悪いんだけど、そうじゃない。
エリの将来に悪影響を与えてないか、とか。
後々後悔されないか、とか。
考えだしたらキリがなくて。
最近あまり夜も寝ていない。
授業終わりのチャイムがなり、生徒たちが一斉に校舎に戻っていく。
俺の視線に気付いたエリは、大きくこちらに手をふった。
火照った頬と嬉しそうな笑顔が眩しくて、俺は目を反らして軽く手を上げた。
エリは沢山の男女に囲まれ、賑やかに談笑していた。
男にしとくのが勿体ない位に愛らしい顔をしたエリは、いるだけで場が華やぐ。
だからエリの周りに人が集まるのは当然で、当たり前のことなのに。
我が儘な俺の心は駄々をこねる。
あー。
俺、何でこんなに早くうまれちゃったんだろ…
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