初雪のクリスマスパレード

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「おー、緑川。わりぃわりぃ、足引っかけちゃってさー」 青ざめた顔の生徒に引っ張られて体育館に行くと、相川が何とものんきな声で謝った。 指導中、足元を見ずに下がりすぎた相川は、網に足を引っかけて転んだらしい。 「たっ!何で殴んだよ!?」 さっきのエリ、どう見たっておかしかった。 追いかけたかったのに。 相川、お前タイミング悪すぎ。 軽く苛立ちを覚えて、ぞんざいに扱うと痛いと怒られた。 4限目終了のチャイムが響いてから、20分ほどたった。 後10分もすれば昼休みも終わる。 俺と付き合い出した1ヶ月前から、いやそのもっと前から。 エリは毎日昼休みと放課後に来ていた。 1日も休まずに来るもんだから、友人関係を心配したこともあった。 でもそのエリが来ない。 昼休み終了まであと5分。 やっぱり昨日無理にでも引き留めるべきだったか? 今頃急に目が覚めて、 “何でこんなおっさんと付き合ってんだろ?” とか考えてんのか? 昼休み終了のチャイムが響く。 結局エリは来なかった。 別れるべきか、とか考えてたくせに。 いざとなるとどうしようもなく怖くて。 俺は嫌な考えに蓋をして、必死に見えないふりを決め込んだ。
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